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RoHS指令とは?対象10物質・適用範囲とRoHS対応メタルコネクターの選び方

RoHS指令は、EU市場で流通する電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する制度です。現在は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムなどを含む10物質が規制対象となっています。
日本国内で製造する製品や部品でも、EUへ輸出される場合や、EU向け製品のサプライチェーンに組み込まれる場合は、RoHS指令への対応を求められることがあります。
本記事では、RoHS指令の目的、対象10物質、最大許容濃度、適用範囲、対象外、適用除外の考え方を初心者向けに解説します。あわせて、部品やコネクターの対応状況を確認する際のポイントも紹介します。
RoHS指令とは
RoHS指令の正式名称と目的
RoHSは「Restriction of the use of certain Hazardous Substances in electrical and electronic equipment」の略称です。日本語では、一般に「電気・電子機器における特定有害物質の使用制限に関する指令」などと訳されます。
現行制度の基本となる法令は、2011年6月8日に採択されたDirective 2011/65/EUです。旧指令を再構成したことから、「改正RoHS」や「RoHS2」と呼ばれることもあります。
RoHS指令の目的は、電気・電子機器に含まれる有害物質を制限し、人の健康と環境を保護することです。使用済み電気・電子機器を回収、再利用、リサイクル、処分する段階で、有害物質が作業者や環境へ及ぼす影響を抑えることも目的に含まれます。
RoHS指令が制定された背景
電気・電子機器には、はんだ、めっき、樹脂、難燃材、電子部品など、さまざまな材料が使用されています。過去には、鉛や水銀、カドミウム、臭素系難燃剤などの有害物質が、一部の材料や用途で広く使われていました。
こうした物質を含む製品が適切に回収・処理されなければ、焼却、破砕、埋め立て、再資源化などの工程を通じて、人や環境へ影響を及ぼす可能性があります。
そこでEUは、廃棄後の処理だけでなく、製品の設計・製造段階から有害物質の使用を抑える仕組みとしてRoHS指令を整備しました。
RoHS1から改正RoHSへ移行した経緯
最初のRoHS指令であるDirective 2002/95/ECは、2003年に制定され、2006年7月1日から規制が施行されました。当初の規制対象は、次の6物質です。
- 鉛
- 水銀
- カドミウム
- 六価クロム
- PBB
- PBDE
その後、2011年に「改正RoHS(RoHS2:Directive 2011/65/EU)」への移行により、対象製品の範囲や事業者の義務が見直されました。それまで対象外だった医療機器、監視・制御機器、その他の電気・電子機器が段階的に対象へ追加され、製品へのCEマーキングの貼付、EU適合宣言(DoC)の作成、技術文書の保管といった、製造業者への法的な義務が明確に規定されました。
さらに、Commission Delegated Directive(EU)2015/863によって、次のフタル酸エステル4物質が追加されました。
- DEHP(フタル酸ビス(2-エチルヘキシル))
- BBP(フタル酸ブチルベンジル)
- DBP(フタル酸ジブチル)
- DIBP(フタル酸ジイソブチル)
これにより、現在は合計10物質が規制対象となっています。
日本国内の製造業にもRoHS指令が関係する理由
RoHS指令はEUの制度であるため、日本国内だけで流通・使用する製品にEU RoHSが直接適用されるとは限りません。
ただし、次のような場合は、日本企業にもRoHS対応が求められます。
- 自社製品をEU加盟国やEEA地域へ輸出する
- EU向け装置を製造する企業へ部品を供給する
- 顧客のグローバル調達基準にRoHS対応が含まれている
- 海外拠点と部品表や設計仕様を共通化している
- 完成品メーカーから含有化学物質情報の提出を求められる
仕向地ごとに部品を分けると、設計、在庫、購買の管理が複雑になります。そのため、EU向け以外の製品にもRoHS対応部品を採用し、部品仕様を統一している企業もあります。
ただし、EU RoHSへ対応していることだけで、すべての国・地域の環境規制を満たすわけではありません。輸出先ごとの法令や顧客仕様を確認する必要があります。
RoHS指令で規制される対象10物質
RoHS対象10物質と最大許容濃度
RoHS指令で規制される10物質と、均質材料中の最大許容濃度は次のとおりです。
| 対象物質 | 略称 | 最大許容濃度 |
|---|---|---|
| 鉛 | Pb | 0.1%(1,000ppm) |
| 水銀 | Hg | 0.1%(1,000ppm) |
| カドミウム | Cd | 0.01%(100ppm) |
| 六価クロム | Cr6+ | 0.1%(1,000ppm) |
| ポリ臭化ビフェニル | PBB | 0.1%(1,000ppm) |
| ポリ臭化ジフェニルエーテル | PBDE | 0.1%(1,000ppm) |
| フタル酸ビス(2-エチルヘキシル) | DEHP | 0.1%(1,000ppm) |
| フタル酸ブチルベンジル | BBP | 0.1%(1,000ppm) |
| フタル酸ジブチル | DBP | 0.1%(1,000ppm) |
| フタル酸ジイソブチル | DIBP | 0.1%(1,000ppm) |
カドミウムのみ0.01%で、そのほかの9物質は0.1%です。
ただし、後述する適用除外の条件を満たしている場合は、最大許容濃度を超える対象物質が含まれていても、RoHS指令に適合した製品として扱われることがあります。
鉛・水銀・カドミウム・六価クロム
RoHS指令で規制される重金属は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロムの4物質です。
鉛は、はんだ、銅合金、ガラス、セラミックなどに使用されてきました。コネクターでは、コンタクトの母材、はんだ付け部、めっきなどが確認対象になります。
水銀は、ランプ、スイッチ、センサーなどに使用されることがあります。カドミウムは、めっき、顔料、電池など、六価クロムは防錆を目的とした表面処理などで使用されてきました。
同じ金属部品であっても、母材、下地めっき、表面処理は別の材料として確認する必要があります。
PBB・PBDE
PBBは「ポリ臭化ビフェニル」、PBDEは「ポリ臭化ジフェニルエーテル」の略称です。いずれも臭素系難燃剤に分類されます。
電気・電子機器では、樹脂部品の燃焼を抑えるために難燃剤が使われることがあります。そのため、コネクターの絶縁体、樹脂製部品、ケーブル被覆などが確認対象になります。
ただし、すべての臭素系難燃剤がRoHS指令で一律に禁止されているわけではありません。RoHS指令が直接規制している臭素系難燃剤はPBBとPBDEです。
DEHP・BBP・DBP・DIBP
DEHP、BBP、DBP、DIBPは、主に樹脂を柔らかく加工しやすくするために使われるフタル酸エステル類です。
代表的な用途には、軟質塩化ビニル、電線被覆、樹脂チューブ、パッキン、接着剤などがあります。
メタルコネクターはシェルが金属製でも、パッキン、ブッシング、ケーブルクランプ、電線などに樹脂やゴムが使われています。そのため、金属部分だけでなく、樹脂・ゴム部品も確認しなければなりません。
均質材料単位で含有濃度を確認する
RoHS指令の最大許容濃度は、原則として製品全体ではなく「均質材料」ごとに判定します。
均質材料とは、全体が均一な組成の材料、または、ねじ外し、切断、破砕、研磨などの機械的な方法によって、それ以上異なる材料に分離できない材料を指します。
メタルコネクターの場合は、例えば次のように分けて考えます。
- シェルの母材
- シェルの表面処理
- コンタクトの母材
- コンタクトの下地めっき
- コンタクトの表面めっき
- 絶縁体
- パッキン
- ケーブルクランプ
例えば、製品全体に占める鉛の割合が0.1%未満でも、特定の均質材料に含まれる鉛が0.1%を超えていれば、適用除外がない限りRoHS指令には適合しません。
そのため、完成品重量に対する単純な含有量だけでなく、部位・材料単位の情報を確認する必要があります。
RoHS指令の適用範囲
RoHS指令の対象となる電気・電子機器
RoHS指令は、原則として、電流または電磁場に依存して正常に機能する電気・電子機器を対象とします。
対象となる電気・電子機器は、交流1,000V以下、直流1,500V以下で使用するよう設計された機器です。
ただし、電気部品が含まれているという理由だけで、直ちに適用対象と判断できるわけではありません。製品の機能、電気への依存性、使用電圧、販売形態、設置方法などを確認する必要があります。
RoHS指令における11の製品カテゴリー
RoHS指令の対象となる電気・電子機器は、次の11カテゴリーに分類されています。
| カテゴリー | 製品区分 |
|---|---|
| 1 | 大型家庭用電気製品 |
| 2 | 小型家庭用電気製品 |
| 3 | IT・通信機器 |
| 4 | 消費者用機器 |
| 5 | 照明機器 |
| 6 | 電気・電子工具 |
| 7 | 玩具、レジャー・スポーツ機器 |
| 8 | 医療機器 |
| 9 | 監視・制御機器(産業用を含む) |
| 10 | 自動販売機・自動供給機 |
| 11 | 上記カテゴリーに含まれないその他の電気・電子機器 |
製造装置、検査装置、測定器、制御機器などは、カテゴリー9または11に該当する可能性があります。
最終的な分類は、製品名だけではなく、機能、用途、販売形態などを踏まえて判断します。
部品・材料・コネクターの扱い
メタルコネクターや電子部品は、単体では完成した電気・電子機器に該当しません。
一方、完成した電気・電子機器は、内部に使用する部品や材料を含めて、RoHS指令の要求を満たす必要があります。そのため、完成品メーカーはコネクターを含む採用部品について、次のような情報を収集します。
- RoHS10物質への対応状況
- 対象シリーズ・型式
- 不使用証明書や適合証明書
- 適用除外の使用有無
- 含有化学物質情報
- 材料・仕様変更に関する情報
これらの資料をすべて収集する必要はありません。完成品メーカーがどのような基準・管理方法をとるのかによって、必要な情報は異なります。
部品単体にCEマーキングの必要はありません。
ただし、部品単体にCEマークがないことと、RoHS指令に対応していないことは全く別の話です。マークがなくても、含有データや証明書によってRoHS対応が証明されていれば、完成品(電気・電子機器)の内部部品として問題なく使用することができます。
RoHS指令の対象外となる製品・設備
RoHS指令では、次のような製品や設備が対象外として定められています。
- 軍事目的の武器、弾薬、軍需品
- 宇宙へ送られるように設計された機器
- 対象外設備専用に設計され、その設備の一部としてのみ機能する機器
- 大規模固定式産業用工具
- 大規模固定設備
- 一部を除く人・物の輸送手段
- 専門用途に限定された非道路用移動機械
- 能動型植込み医療機器
- 一定条件の太陽光発電パネル
- BtoBで提供される研究開発専用機器
- パイプオルガン
対象外に該当するかどうかは、名称だけでなく、設備の規模、恒久的な設置状況、専用設計の有無、ほかの場所でも使用できるかなどを確認して判断します。
EU市場へ「上市」するかを確認する
RoHS指令の適用を判断するうえでは、製品をEU市場へ「上市」するかどうかが重要です。
日本国内で製造した装置をEUの顧客へ直接販売する場合だけでなく、EU域内の輸入者、販売会社、装置メーカーを通じて供給する場合も確認が必要です。
日本国内の工場だけで使用され、EU市場へ流通しない製品は、EU RoHSの直接的な対象になりません。
ただし、顧客仕様や社内環境基準によって、法令上の直接的な義務とは別にRoHS対応を求められることがあります。
RoHS指令の適用除外とは
適用除外が設けられている理由
RoHS指令では、対象物質を使用しなければ必要な性能や信頼性を確保できない用途について、一定の条件で適用除外が認められています。
適用除外が検討される主な理由には、次のようなものがあります。
- 代替材料への変更が科学的・技術的に困難
- 代替材料の信頼性が十分に確保できない
- 代替による環境・健康・安全面の悪影響が、代替による利益を上回る
適用除外は、対象物質の使用を全面的に認める制度ではありません。対象となる物質、材料、用途、製品カテゴリー、期限などが個別に定められています。
メタルコネクターに関係する適用除外6(c)
メタルコネクターでは、コンタクトやその他の金属部品に銅合金が使用されることがあります。
銅合金に鉛を加えると、切削性や加工性を高められるため、複雑な形状や高い寸法精度が求められる金属部品に使用されてきました。
一方、RoHS指令における鉛の最大許容濃度は、均質材料中0.1%です。そのため、鉛を0.1%より多く含む銅合金は、本来であれば制限の対象になります。
そこで、RoHS指令の附属書IIIに設けられているのが、適用除外6(c)です。
適用除外6(c)では、鉛を重量比4%まで含む銅合金について、一定条件のもとで鉛の使用が認められています。
これは「銅合金中の鉛は4%まで通常の制限値として認められる」という意味ではありません。通常の最大許容濃度はあくまで0.1%であり、6(c)は0.1%を超える鉛の使用を例外的に期限付きで認める規定です。
2026年7月時点の統合条文では、適用除外6(c)の期限は2027年6月30日とされています。
ただし実務上は、業界団体から「延長申請」が出されており、欧州委員会による最終決定(代替材料の普及状況などの審査)が下されるまでは、2027年7月以降も適用が継続される見込みです。とはいえ、将来的には「4%」という許容値が引き下げられたり、用途が限定されたりするリスクは常に残っています。
コネクターの証明書では、次のような表現が使われることがあります。
- RoHS指令対応
- RoHS指令対応・適用除外6(c)該当
- 銅合金中の鉛に適用除外を使用
- Annex III 6(c)
適用除外6(c)に該当している製品も、定められた条件を満たしていればRoHS指令に対応した製品として扱われます。
ただし、「適用除外を一切使用せずに0.1%未満に抑えている製品」と、「適用除外6(c)を使用して4%近くの鉛を含んでいる製品」では、材料構成や将来の変更リスクが異なります。証明書を確認するときは、「RoHS適合対応」という結論だけでなく、適用除外の使用該当有無も確認してください。
また、一般消費者向けに供給される電気・電子機器のうち、子どもが口に入れる可能性のある小さな部品については、RoHS指令だけでなくREACH規則などの別の規制によって、鉛の含有・放出量にさらに厳しい追加制限が課される場合があるため、製品の用途に応じた確認が必要です。
適用除外には有効期限がある
RoHS指令の適用除外は、原則として無期限ではありません。
代替材料や代替技術の状況が定期的に評価され、延長、条件変更、細分化、終了などが行われます。
適用除外を使用する場合は、次の情報を管理します。
- 適用除外番号
- 対象となる材料・用途
- 対象製品・型式
- 対象カテゴリー
- 有効期限
- 最新の改正状況
なお、期限までに更新申請が提出された既存の適用除外は、欧州委員会が更新可否を決定するまで有効です。更新が認められない場合も、通常は12~18か月の移行期間が設定されます。
期限の日付だけで適合・不適合を判断せず、最新の統合条文や欧州委員会の公開情報を確認することが重要です。
最新の適用除外情報を確認する方法
適用除外の最新情報は、次の順番で確認します。
- EUR-LexのRoHS指令統合条文
まずは現在の「公式な最新版法律」を確認します。2026年7月現在、EUR-Lex(EU法データベース)では「2026年7月1日版」の統合条文が公開されています。 - 欧州委員会のRoHS指令ページ
RoHS指令を管轄する官庁のページです。適用除外に関する最新の決定事項や今後の予定がアナウンスされます。 - 附属書III・IVを改正する委任指令
統合条文にまだ反映されていない最新の改正(追加・変更・失効など)は、官報に掲載された個別の「委任指令」として先行して発表されます。 - 適用除外の申請・更新に関する公開情報
欧州委員会から調査を委託された専門機関による、延長申請の評価レポートや審議状況(Pack 15など)を確認し、将来のリスクを予測します。 - 業界団体や専門機関の解説
一次情報の解釈が難しい場合、信頼できる日本のJAMP(化学物質管理情報共有共通スキーム)やJEITA(電子情報技術産業協会)などの解説を参照します。
法令情報を確認するときは、記事や証明書の作成日だけでなく、参照している統合条文の日付も確認してください。また、欧州委員会で決定が下されてから、①の統合条文に文字として反映されるまでには数ヶ月から1年近いタイムラグが生じることがあります。
「統合条文が変わっていないから大丈夫」と過信せず、直近で③の個別指令が出ていないか、④の審議がどう進んでいるかまでをセットで確認することが、実務におけるリスク回避の鉄則です。
RoHS指令に適合するために必要な対応
対象製品と構成部品を特定する
最初に、自社製品がRoHS指令の対象となるかを確認します。
主な確認項目は次のとおりです。
- 電気・電子機器に該当するか
- 使用電圧が対象範囲内か
- 11カテゴリーのどれに該当するか
- 対象外製品・設備に該当しないか
- EU市場へ上市するか
- 補修部品などの特例が関係するか
対象製品である場合は、BOMをもとに部品、材料、ケーブル、付属品などを特定します。
サプライヤーから必要な資料を収集する
部品や材料のRoHS適合性を確認するため、サプライヤーから関連資料を収集します。
代表的な資料は次のとおりです。
- RoHS10物質不使用証明書
- RoHS適合証明書
- 含有化学物質調査回答
- chemSHERPAデータ
- 材料宣言書
- 分析データ
- 適用除外使用情報
資料を確認するときは、「RoHS対応」と書かれているかどうかだけで判断しないことが重要です。
不使用証明書・適合証明書を確認する
証明書では、次の項目を確認します。
- 発行元
- 発行日・改訂日
- 対象となる法令
- 対象物質名
- 対象シリーズ・型式
- 対象材料のグレードや品番
- 適用除外の使用有無
特に注意したいのが、古い「RoHS6物質対応」の証明書です。RoHS6物質への対応だけでは、追加されたフタル酸エステル4物質を含むRoHS10物質への対応を証明できません。正式品名・型式を別途ご確認ください。
分析データの役割を理解する
分析データは、証明書や材料情報の裏付けとして使用されます。
ただし、特定の試料を分析した結果だけで、製品全体の適合性を証明できるとは限りません。
例えば、蛍光X線分析は金属に含まれる鉛などの確認には利用できますが、樹脂中のフタル酸エステル類を同じ方法で十分に評価できるとは限りません。
また、分析した材料ロットや型式が、実際の購入品と一致しているかも確認する必要があります。
資料は、次のように役割を分けて考えると分かりやすくなります。
| 資料 | 主な役割 |
|---|---|
| 証明書 | 対象製品の適合性に関するサプライヤーの宣言 |
| 材料情報 | 構成材料や含有物質の情報 |
| 分析データ | 特定試料を測定した結果 |
| 適用除外情報 | 制限値を超える物質を使用できる法的根拠 |
技術文書とEU適合宣言を整備する
完成した電気・電子機器をEU市場へ上市するメーカーは、適合性評価を行い、技術文書とEU適合宣言を作成する必要があります。
技術文書には、製品構成、設計情報、部品・材料の適合証明、適用除外、評価方法、変更管理などを含めます。
技術文書とEU適合宣言は、製品を上市してから10年間保管することが求められます。
RoHS指令の技術文書を整備する際は、有害物質制限への適合を評価するための調和規格であるEN IEC 63000:2018が参照されます。
完成品メーカーは、部品メーカーから取得した証明書や材料情報を技術文書へ組み込み、完成品としてEU適合宣言とCEマーキングを行います。
材料・仕様変更時に再確認する
一度RoHS適合を確認した製品でも、材料や製造方法が変われば、再評価が必要になる場合があります。
確認すべき変更には、次のようなものがあります。
- 母材メーカーの変更
- めっき仕様の変更
- 樹脂グレードの変更
- 難燃剤・可塑剤の変更
- 製造工場の変更
- 表面処理業者の変更
- 生産終了品から代替品への切り替え
- 適用除外の期限・条件変更
証明書を一度取得して終わりにするのではなく、材料変更や法令改正に応じて情報を更新する仕組みが必要です。
RoHS指令とほかの環境規制との違い
RoHS指令とREACH規則の違い
RoHS指令は、主に電気・電子機器に含まれる特定有害物質の濃度を、均質材料単位で制限する制度です。
一方、REACH規則は、化学物質の登録、評価、認可、制限を包括的に扱うEUの規則です。化学物質そのものだけでなく、混合物や成形品に含まれる高懸念物質について、情報伝達や届出が必要になる場合があります。
RoHS指令に対応していても、REACH規則の確認が不要になるわけではありません。
REACH規則の「認可対象候補物質(SVHC:高懸念物質)」は数百種類に及び、年2回ペースで追加され続けています。RoHSの10物質をクリアしていても、REACH規則の義務(情報伝達や届出)が免除されるわけではありません。製品含有化学物質を管理する際は、両者を完全に分けて並行して確認する必要があります。
RoHS指令とWEEE指令の違い
RoHS指令は、電気・電子機器に含まれる有害物質を、製品の設計・製造段階で制限する制度です。
WEEE指令は、使用済み電気・電子機器の回収、再使用、リサイクル、資源回収などを定める制度です。
簡単に整理すると、RoHS指令は「製品に何を含めるか」、WEEE指令は「使用済み製品をどのように回収・処理するか」に重点があります。
EU RoHSと中国RoHSの違い
中国RoHSは、EU RoHSを参考にしながら、中国独自の表示、情報開示、適合管理の仕組みを採用しています。
EU RoHSに対応していても、中国RoHSで求められる表示や含有情報を満たすとは限りません。
中国向け製品では、対象製品、表示方法、達成管理目録、合格評定制度などを別途確認する必要があります。
RoHS対応メタルコネクターの選び方
RoHS対応メタルコネクターを選ぶ際は、環境対応だけでなく、電気的・機械的な仕様も含めて確認します。
構成材料と適用除外を確認する
メタルコネクターは、金属、樹脂、ゴムなど複数の材料から構成されています。
| 部位 | 主な構成材料 | 主に確認すべきリスク物質・項目 |
|---|---|---|
| シェル | 金属(アルミ、亜鉛ダイカスト等) | 母材の含有物、塗装、表面処理(六価クロムのクロメート処理がないか) |
| コンタクト | 銅合金(黄銅、青銅など) | 鉛(適用除外6(c) の使用有無)、下地めっき、表面めっき |
| 絶縁体 | プラスチック樹脂 | 難燃剤(PBB、PBDE)、樹脂を柔らかくするフタル酸エステル4物質 |
| パッキン | シリコン、ニトリルゴム等 | ゴム配合剤、軟質化のための可塑剤(フタル酸エステル4物質) |
| ケーブルクランプ | 金属または樹脂・ゴム | 各種樹脂・ゴム材の含有物質(上記に同じ) |
| はんだ | 金属接合材 | 鉛の有無(高融点はんだの場合は 適用除外7(a) の該当有無) |
| ケーブル | 導線、シース(被覆) | 被覆材(PVC等)のフタル酸エステル4物質、樹脂の臭素系難燃剤 |
特に、コンタクトなどに鉛を含む銅合金が使われている場合は、適用除外6(c)の使用有無を確認します。
証明書の対象範囲を確認する
証明書では、次の項目を照合します。
- 購入型式が対象に含まれているか
- シリーズ共通証明書か、個別型式の証明書か
- RoHS10物質が対象か
- 特注仕様やハーネス品を含むか
- 適用除外番号が記載されているか
- 発行日・改訂日が現在の仕様と対応しているか
発行日が古いことだけを理由に、直ちに証明書が無効になるわけではありません。
ただし、発行後に材料変更や法令改正が行われている可能性があるため、現在の製造仕様に対する証明かどうかを確認します。
RoHS指令に関するよくある質問
RoHS指令とは何を規制する制度ですか
RoHS指令は、EU市場へ上市される電気・電子機器に含まれる特定有害物質の使用を制限する制度です。
人の健康と環境の保護、使用済み電気・電子機器の適切な回収・処分への貢献を目的としています。
RoHS指令の対象10物質は何ですか
対象10物質は、鉛、水銀、カドミウム、六価クロム、PBB、PBDE、DEHP、BBP、DBP、DIBPです。
カドミウムの最大許容濃度は0.01%、そのほかの9物質は0.1%です。原則として均質材料単位で判定します。
日本国内だけで使う製品にも対応が必要ですか
EU市場へ上市せず、日本国内だけで使用する製品であれば、EU RoHSが直接適用されることはありません。
しかしながら社内環境基準、将来の輸出、海外拠点との部品共通化などを理由に、完成品メーカーの多くがグリーン調達基準として「全部品RoHS対応」を求めることが一般的なため、ビジネス上の実務としては「ほぼ必須」となっています。
RoHS対応とRoHS適合は同じ意味ですか
「RoHS対応」と「RoHS適合」は、企業や資料によって使い方が異なります。
用語だけで判断せず、証明書の内容を確認することが重要です。
適用除外6(c)を使ったコネクターはRoHS対応ですか
鉛を重量比4%まで含む銅合金について、適用除外6(c)の条件を満たしている場合は、RoHS指令に対応した製品として扱われます。
ただし、「鉛を含んでいない」という意味ではありません。
証明書では、適用除外6(c)を使用している部品・材料と、最新の有効期限を確認する必要があります。
コネクター単体にもCEマーキングが必要ですか
コネクター単体は完成した電気・電子機器に該当しません。また、RoHS指令に基づくCEマーキングやEU適合宣言を単体に行う必要はありません。
一方、完成品メーカーは、コネクターを含む構成部品がRoHS指令の要求を満たしていることを確認しなければなりません。
そのため、コネクターには不使用証明書や含有化学物質情報が求められます。
RoHS不使用証明書があれば分析は不要ですか
不使用証明書があれば、必ず分析が不要になるとは限りません。
部品のリスク、証明書の内容、サプライヤーの管理体制、材料変更の有無、顧客要求などを踏まえて判断するのが一般的です。確認のできるデータ提供については、メーカーへの確認が必要です。
まとめ|RoHS指令と構成材料を確認してコネクターを選定しよう
RoHS指令は、EU市場へ上市される電気・電子機器について、次の10物質を制限する制度です。
- 鉛
- 水銀
- カドミウム
- 六価クロム
- PBB
- PBDE
- DEHP
- BBP
- DBP
- DIBP
最大許容濃度は、カドミウムが0.01%、そのほかの9物質が0.1%であり、原則として均質材料単位で判定します。
メタルコネクターを確認するときは、「RoHS対応」という表示だけでなく、次の点を確認することが重要です。
- RoHS10物質への対応
- 対象シリーズ・型式
- シェル、コンタクト、めっき、絶縁体などの構成材料
- 適用除外の使用有無
RoHS指令や適用除外は改正されるため、製品採用時だけでなく、材料変更や法令改正の際にも最新情報を確認することが大切です。



